2013/07/05

IWG用・メインナイフ

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もうすでにビデオを見られた方は多いかと思いますが、ビデオでは紹介していない部分を含みますので、先日英語版で投稿した記事の日本語版です。

ツイッターで私をフォローされてる方はもうご存知かと思いますが、今年8月からの10ヶ月間、ウィルダネスガイド養成学校へ行くことになりました。フィンランドには100種以上の専門職を訓練学校が多くあり、私が通うのは"International Wilderness Guide"コース、通称IWGと呼ばれる物です。このコースの目的は、お連れするお客様が、安全にそして楽しい時間を過ごせることをお手伝いできるガイドを育てること。学習することも、ガイドスキルやトレッキングスキルだけではなく、ファーストエイド、サバイバルスキル、350種以上の動植物の判別などなど盛りだくさん。つまり簡単に言ってしまうと、10ヶ月集中ブッシュクラフト漬け学校なわけです。

もし興味のある方はぜひ学校のホームページをご覧ください。インターナショナルコースですので授業は英語。参加者も世界各地から来てます。
学校のページ>http://www.tao.tampere.fi/tao/TAOWWWAIKUISET/era-_ja_luonto-oppaan_at_(international_wilderness_guide).html
ブログ友達でこのコースを卒業した方のページ> http://hikinginfinland.com/blog/categories/iwg/


で、ナイフの話の前になぜIWGの話をしたかといいますと、このコース、基本的に10ヶ月森篭りとなります。ロシアのボレアルフォレストで2週間とか、真冬のラップランドで一週間ソロとか・・・(←これ死ぬかもw)
ということで、大抵の必要になる物は持っているのですが、いくつか新しく追加、買い替えしなければならない道具がでてきました。

その内のひとつがナイフ。勿論ナイフは何本か持っていますし、今までメインで使っていた物で大抵の事は難なくこなせます。しかし、今までのメインナイフは元物木工用に作った物。本格的な長期ディープフォレストや、真冬のラップランドに対応するには心元もとなさすぎます。もう少しこうパワフルなナイフ、そう、あのサーメ人の右腕、レウクのような一本がほしい!と思い立ち、作ってみました。


これが、私のこれから10ヶ月間の相棒となる和フィン折衷ナイフ、 IWG仕様です。




IWG用と言っておりますが、実はこのナイフのアイディアは私が鍛冶を始めた頃から育ててきた物で、色々な方向へウロウロ。一時期は和式ブッシュクラフトの方向だったり、鉈ベースだったり・・・
で、アイヌマキリの形に興味を持ったあたりで方向性がまとまってきた物です。作製もIWGの話が浮上する前に作り始めてます。

プーッコとマキリを合わせて、フルタングにするアイディアの木型

今回のナイフの直接な元になった木型。フルタングヴァージョンより少し大きめ。タングはコンシールド.
シースの木型も作成し、サーメのレウク方式が使えるか確認。

しかし作り始めてまもなくした頃、IWGに願書出すことを決意し、合格。パワフルなナイフが必要だな>このナイフを少し大きくしたらちょうど良さそうだ!ということで予定変更。

鍛造時に横着してかなりの量の削り代を残していたのが幸いし、この作りかけをそのままサイズアップ版へ移行できました
鍛造後の様子

完成した物を木型と並べるとサイズの違いが良く分かります。

大きさ変更は問題なく行ったものの、またしても刻印が上手く打ち込まれません。これ、なんでこんなに難しいのでしょうか?打ち方が下手なのか、印が不良なのかその原因すら掴めません。

2回打つと修正不可能になる可能性大きいので、刻印は諦め。薄っすらと入った印を元に、鏨で掘り込んでしまいました。あまり綺麗ではないですが、自分用のナイフなのでOKです。
脂台にブレードを固定した様子. 

熱処理は難なく成功、しかし思いがけない場所で問題発生。ハンドル材へタング穴を開けている最中、通常なら何の問題も無く比較的簡単にまっすぐドリルは入っていくのですが、この時は何故か横へ横へと逃げる。何とか修正しようとしても、どうやっても同じ方向に逃げる。
この大きさのナイフの柄に使えるサンザシはこれで最後なので、仕様不可にしてしまうリスクは避けなければならないので、しかなくツーピースすることに。
反割りにし、タングの形にくり貫いたらエポキシで張り合わせ。強度を出すために、ここはワンピースの方が良いのだが仕方が無い。エポキシの強度テストと言うことで妥協。

ブレードはレウクの雰囲気を帽子部分に残しつつ、刀風に。
シースとハンドルはアイヌマキリ風に。
そしてナイフの抜け落ち防止対策にサーメのレウクシースの構造を取り入れました。 
ブレードは少し反りがあり、帽子部分はレウクの様に強くあがります。このため、刃渡りは12cmですが、切り歯の長さは14cmほどになります。そして、この曲がりのために、ナイフを鑿のような感じで押して使うことができようになってます。この使い方は実はとても便利で、フェザースティックを作る時などの切り込み角をコントロールしやすくなります。
先を鑿の様な感じに使う事が可能。.

ブレードの断面は5角形、グラインドはコンベックス。このプロファイルは断ち切るときに抵抗が少なくて良いのですが、この形にした理由はどちらかと言うと削り作業時の小回りを利かしやすくするため。このナイフの様に幅が30mmもあると、フラットグラインドにするとサドルノッチのような削りが面倒になる。
トライスティックテスト。使ったことの無いノッチ、覚えていないノッチは省略した。
完成したナイフは早速使ってテストをしてみる。

テストその1はトライスティック。元々はナイフの使い方の練習に利用する物なのが、ナイフの使用感テストにも適度なので利用しています。


テントペグとポットフック。最も基本で簡単な削り・・・なのだが、ここで早速問題発生。ポットフックは、バトニングでクロス(×)を切り込み、そして要らない部分を削り取る方法が最も手早くできる。そこで何度もやったようにバトニングを開始。トン・トン・トンと3回打ったところで先が切り落とされてしまった。切れすぎw いつも道理の手加減だと強すぎたようだ。


 スクエアーとラウンドリダクション。これは何の問題も無く完成。

ラッシング・クロスとVノッチ、そしてサドル・ノッチ。ラッシングクロスは今まで経験したこと無いほど簡単にできてしまった。サドルノッチは特にやりやすいわけではないが、何の問題も無く削れた。

ブッシュクラフトでのスプーン作りは、そもそもはナイフの練習用題材だったらしいです。ですので、普通のナイフ一本で作るのが本来の技法なのだとか・・・
網針(後方に写ってる穴)とスプーン。網針は失敗。原因はやはり切れすぎ。半乾きの白樺の枝ではほぼ抵抗無くスカッと刃が入るのでコントロール仕切れなかった。
そしてスプーン。通常はフェザースティックで〆るのだが、フェザースティックは問題なくできることを確認済みだったので、もうひとつのナイフ練習用教材、スプーンに挑戦。こういった細かな作業をするには少し大きすぎるナイフですので、少し無理した持ち方をする必要はありましたが、問題なく完成。スプーンのくぼみ部分もかなりまともな形に掘り込むことができました。



最後に、テストその2。薪のやまから適度な太さの節付き白樺を取り出し、チョッピングとバトニングのテスト。こちらはビデオ撮りましたのでどうぞ!








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