2015/08/22

Ilmajoen hattutuppi puukko (イルマヨエン・ハットゥ・トゥッピ・プーッコ)

プーッコとひとくくりに呼んでますが、実は色々な種類のプーッコがあります。
今回紹介するのはその中でも特に一風変わったプーッコ、Ilmajoen hattutuppi puukko (イルマヨエン・ハットゥ・トゥッピ・プーッコ)。

名前の意味ですが、イルマヨキの帽子シースプーッコ、となります。理由は単純。シースに帽子が付くからですw
この感じだとネックナイフかと思われますが、れっきとした腰下げ。

プーッコのタイプとしては実用プーッコ(ペザント・プーッコ)の部類で、ナイフ本体のパーツは柄とブレードの2パーツのみで構成されてます。
柄とブレードの境、刃が柄に入りきってないような作りですが、これは掃除や研ぎなどのメンテナンスをし易くする為。決して柄に入れられなかった失敗ではないですよーw

本体がシンプルな分シースの装飾は質素に凝るのが伝統的。パターンマーキングにて作者の個性を注ぎ込む、見所の一つとなります。

写真は私が伝統プーッコの文化、様式、技法を学ぶ為に習って作ったもの。
刃がガッツリ磨かれてますが、これはテンパーライン見たさに磨いたから、本当は削り傷残ったままが正統です。

<スペック>
刃渡り:122mm
刃厚:47mm〜37mm
柄: 白樺古木材(通常の白樺よりもかたいです)



2015/08/15

変り種、コレクター向けプーッコ


変り種、コレクター向けプーッコになりますが面白いかなぁと思いますので紹介です。

ポヒヤンマースタイルのプーッコです。



カウハバスタイルのシースにレウクスタイルのブレードと変な組み合わせです。

全くカテゴリが違う様に見えるこの2本、実は同じカテゴリのプーッコです。



???と思いますか?

←この写真を見ていただければ納得かと思いますが、実はこの2本、ミニ・プーッコと呼ばれるカテゴリの物です。





ミニ・プーッコ、その名の通りミニチュアサイズのプーッコで大体マッチ棒位の大きさです。で、このミニ・プーッコ、面白いことに結構歴史があり、古い物が時々出てきて、良い物はコレクターの間で中々の値で取引されます。

で、何故こんな小さなプーッコにコレクターの人気が集まるか?
先ず、この大きさですがその作り方は手抜き無しで、通常サイズを作る時と同じ作り方をするからです。
これはどうやら、昔カウハバ辺りの鍛冶屋が、面白半分の腕自慢に作ったのが始まりらしい・・・と言うのが説で、古い物を見るとその造りの精巧さには感激します。
そして理由2は『腕自慢』に作った物なので数がとても少ない!1本か2本作って「どうだ!!」と自慢したらおしまいなのでその後は作らないわけです。
これだけでもコレクターを熱くさせる理由になるのですが、これに加えて、これらのプーッコには通常銘が打たれていない。これが『面白半分』の部分らしく、出来から誰の仕事か当ててみろ!と言う事らしいです。

そうなればコレクターは勿論アーデモナイこうでもないと推測し合うわけです。粋ですねぇ、昔のプーッコ鍛治w

これらのプーッコの見所ですが
・その小ささ
・精巧さ
・作者当てクイズw
の3点となります。

 

ちなみに今回写真に写っている物ですが、ポヒヤンマースタイルの物は私の作。真面目に鍛造でベベル出しまで打って作ってますし、まともに切れます。
レウクスタイルの方はあのラウリ・ブレードのLauri(ラウリ)作です。レウクスタイルの物はお土産用量産ミニ・プーッコなのでかなりの量が出回ってます。

2015/08/08

サーミのナイフuuna-niibas(ウーナ・ニーバス)


サーミナイフだとかサーメプーッコなどと呼ばれるナイフですが、それは南の人間の呼び方で、日本本土の人がマキリをアイヌ小刀と呼ぶのと同じ。オリジナルの名前はuuna-niibas(ウーナ・ニーバス)です。


その装飾がとても北方民族の物独特で、プーッコでありながら他のプーッコとは一線を介している存在。また、その作り手も少ないのが現状。
と言うのもこのプーッコ、実はその伝統がフィンランドでは一度死に絶えかかった時期があったのだとか・・・で、
今回はその時、復活に尽力を尽くされた先生に習う機会がに恵まれました。


通常プーッコには、何がプーッコなのか?という定義は無い・・・とうか、あまりはっきりと定義できないのですが、そのプーッコに含まれるこのウーナ・ニーバスに関してはハッキリと線引きがあります。

・刃以外、主要部品は白樺とトナカイから採れた物を材にする
  これは単純にラップランドでは他の材料の入手が難しいため。

・使用する金具は銀色であること
  これは重要なポイントで、伝統的にサーミ人の装飾品は銀色。なので、そこに真鍮などの金色を持ってくるとコーディネートが崩れてしまうわけですw

・シース全体を革で覆わない。刃の収まる部分はトナカイの角で作るのが基本です。


このプーッコの見所はやはり柄とシースに彫られた模様。この模様はトナカイの角で出来た部分へ傷をつけるのではなく、チップカービングの要領で実際に模様を彫りこみ、そこへ墨を入れて作り出します。
色は2色、煤で入れる黒とハンノキの樹皮から作る染料で入れる茶色。珍しい物には白黒反転し、全体を黒く着色した後に彫り、線を白く出したものもあります。

模様以外の見所は形。特にシース下部の曲がりと、柄尻の形状の美しさ。柄尻の形状の美しさは作者の個性とセンスが問われる部分で、比べてみるとその違いが良く解ります。
シースの曲がりは、角の自然な曲がりを上手く利用して整形するので、その自然な美しさを上手く見極めて残すセンスが必要となります。ちなみに、右利きシースは右の角から、左は左の角から作ります。これは、シースにした時、その自然な曲がりのために、逆に使うととても座りの悪いものとなるためです。



写真は、私が習いながら作った物ですので美しくない部分が多く、あまりサンプルには向かないかもですが、ウーナ・ニーバスを呼べるような出来にはなってます.